日曜日。この日も、午前に1件、午後に2件のアポイントが入っていた。前日の土曜にも何軒か見て回ったが、賑やかすぎたり、逆に静かで遠かったりと、決め手に欠けていた。
ナナイモ駅近くの、フィリピン系の家
まず今日は、ナナイモ駅近くの家からだった。訪問すると、フィリピン系の女性が出迎えてくれた。いきなりハグをされる。
「私、日本人大好きなのよ! 綺麗に使ってくれるし、礼儀正しいし! きてきて!」
そう言われて、早速おじゃました。中には、フィリピン系の高齢の女性もいる。おそらく、オーナーのお母さんだろう。挨拶をして、2階に上がらせてもらった。若干、昨日作ったものだろうか、料理の匂いが充満していた。
部屋に入ると、机、家具、ベッドがあって、とても綺麗だった。ナナイモ駅から近いのも、高ポイントだ。ただ、部屋まで料理の匂いがきていた。
1階に降りた後、女性は矢継ぎ早に言葉を飛ばしてきた。
「いつから来る? ここ、2月末からいいよ! 1ヶ月500ドルでいいわよ」
僕が入ることを、もう決定しているかのような勢いだった。いい家だし、ぜひ行きたい。でも今日は別の家の見学があるから、明日までに回答でいいかな——そう答えるのが、精一杯だった。
タワマンの一室、4LDKに10人
午後に行ったシェアハウスは、今でいうタワマンの一室だった。ダウンタウンには高層マンションが多いが、その一室に、シェアハウスの空き部屋があるという。
正直、僕はその外観を見ただけで、「ここに決めだな」と思っていた。マンションは新しい。ダウンタウン内にあって、学校や図書館へのアクセスもいい。周辺環境は、今までで一番だった。僕はワクワクしながら、中に入らせてもらった。
今回、案内してくれたのは、日本人ワーホリ生の女性だった。退去するときは、自分で次の人を見つけるというルールらしい。なんて厳しいんだ、見つけられなかったらどうなるんだ、と思った。
彼女に案内されるまま、タワマンの上層階に着く。English Bayが遠くに見える。海が、きれいだった。
部屋に着くと、4LDKくらいの間取りだった。リビングには、ついたて(個別ブースの境目のようなもの)があった。彼女の部屋は、このついたての奥側だという。手前には、別のワーホリ生が寝ていた。ついたてもないスペース(テレビが見られて、ソファが置いてある)も、別のワーホリ生が使っていて、彼はプライベートのない空間で過ごしていた。4つある個室は、それぞれカップルや別の人が使っている。この間取りに、10人で暮らしている計算だった。
外観に一目惚れした僕の気持ちは、少ししぼんでいた。立地は最高なのに、中はこれか、と。
最後にたどり着いた、お屋敷のような家
この日、最後に見た家は、偶然にも、ホストファミリー宅と同じ通りにある家だった。徒歩で5分ほど。
バンクーバーの家は、基本的に大きい。だいたいどの家も、家の前に(大きさはさまざまだが)広場があって、植木や植物が置いてあったり、自転車が置いてあったりする。このシェアハウスは、門があって、広場にはほぼ何も置いておらず、奥にでかい扉があった。この広場だけで、もう一軒建てられそうだった。
今回も、案内してくれたのは日本人女性だった。ここに住んでいるらしい。1階に入ると、木で作られたログハウス基調の家で、きれいに掃除されていた。部屋は1階に2部屋あって、奥にキッチンとリビングがある。地下に通じる階段もあった。キッチンを覗かせてもらうと、鍋や包丁、冷蔵庫など、必要なものは一通り揃っていた。
次に、2階に上がらせてもらう。3人は通れそうな、大きい折り返しの階段を登った先に、家の内側を囲むように通路が広がっていた。L字になっていて、右手奥が女性(なおこさん)の部屋。左側はシャワールームと、奥に2部屋あった。僕の部屋は、一番奥だった。
中を見せてもらうと、緑基調の絨毯に、木の机、そして真ん中にクイーンサイズのベッドがある。クローゼットもついていた。おそらく、8畳はあった。
住んでいる人を聞くと、全員、日本人の男女とのことだった。できれば多国籍がよかったが、学校もあるしmeetupもあって、英語環境はつくれている。家くらいは日本語環境でもいいかもな、と思った。
何より、日本語環境ということを除けば、非の打ち所がない家だった。今までに回った5軒のうちで、ダントツで環境がよかった。
オーナーのマイと、カラオケルーム
僕はなおこさんと一緒に、地下のオーナーに挨拶にいった。オーナーのマイはベトナム人で、日本の長崎と福岡で仕事をしていたことがあった。それゆえ日本人が好きで、シェアハウスも基本的に、日本人だけを募集しているという。
「きれいに使ってくれて、礼儀正しいのが好きよ」
マイはそう言っていた。地下には洗濯機、乾燥機、そして奥に、ものすごく大きな部屋があった。入らせてもらうと、そこはカラオケルームだった。
「ゆうすけ、あなたがもしここに住んだら、ここでカラオケパーティしましょう」
マイは、そう言ってくれた。僕はマイとなおこさんにお礼を言って、明日回答するので、少しだけ待っててください、と伝えた。
帰りは近所なので、すぐに家に着く。あたりは、すっかり真っ暗だった。
ホームステイ延長で、怒られる
翌日、僕はマイに連絡をして、あの家に決めたことを伝えた。あれだけの家だ、迷う理由はなかった。
ただ、一つ問題があった。シェアハウスの入居日との兼ね合いで、ホームステイを少しだけ延長する必要があったのだ。僕はよかれと思って、直接ホストファミリーに「あと数日いていいですか」と聞いて、OKをもらった。
ところが後日、カナダジャーナルに注意された。ホームステイの延長は、エージェントを通してください、と。ホームステイの契約はエージェント経由なので、勝手にファミリーと決めると、話がややこしくなるのだ。自分では気を利かせたつもりが、筋を通していなかった。
これからワーホリに行く人は、ホームステイの延長や変更があったら、必ずエージェントを通したほうがいい。よかれと思った行動が、かえって迷惑をかけることもある。僕は、小さな勉強をした。
こうして僕は、ホストファミリー宅での最後の数日を過ごし、いよいよ、すぐ近くのシェアハウスへと移ることになった。
