語学学校3日目。
クラスのメンバーや先生の名前も覚え、少しずつ充実してきていた。
相変わらず、わからない表現は多くて調べる生活は続いていた。
ただ、僕には一つ、悩みがあった。
午前コースを選んでいた僕は、午後の時間を持て余していたのだ。
日本人カウンセラーさんに相談
この学校には、日本人のカウンセラーさんがいた。
バンクーバーでは基本的に、どの学校にも日本人カウンセラーがいることが多いが、
この人(もとさん・女性)は、特にいい人だった。
2月から入った日本人留学生が僕だけだったこともあり、
もとさんは僕をかなり気にかけてくれていた。
僕は午前中で授業が終わるので、昼食を食べた後、
現地生活のことを相談することがよくあった。
あまり日本語で会話しすぎるのも良くないかと思ったが、教員室の中ならいいよ、とのことで、
日本語で会話させてもらっていた。
その日、僕は午後の過ごし方について相談していた。
授業が午前で終わるので午後が暇なこと、
この午後をどう過ごせば、よりバンクーバー生活が充実するか、と。
もとさんは、まあもちろん午後の授業を取るのが一番なんだけど(笑)と前置きした上で、こう言った。
「ゆうすけの趣味は? 」
僕がバスケだと答えると、
「バスケだったら、たくさんやってるところがあるから、調べてみようか」
と言うと、もとさんは目の前のパソコンを使って、「バンクーバー コミュニティセンター」と検索した。
検索結果が出ると、スポーツセンターや公民館でバスケをやっている場所の一覧が出てきた。
もとさんはそれをコピーしてくれて、こう言った。
「ゆうすけの家の近くだと、ここが近いよ。たまたま今日の夕方からやってるし、行ってみたら!」
僕はもとさんにお礼を言って、そういえば現地でやりたいことの一つに
バスケがあったな、と思い出した。
バッシュを買いに行く
僕は小学生の頃からバスケをやっていて、社会人になってからも続けていた。
ただ、バッシュ(バスケットシューズ)は重いしかさばるので
スーツケースに入らず、持ってこなかった。
それが、こんなに早く必要になるとは。
僕は学校の帰り道、スポーツショップに寄った。
さすがはバンクーバーで、サイズの大きいシューズもたくさんある。
確か足のサイズが30cm以上のものも多く扱っていて、
改めて欧米人の体の大きさを知った。
僕はジョーダンブランドの、ブルーのバッシュを買った。
170ドルだった。
夕方になり、いつもより早めに帰宅した。
マザーに、今日は早いわね、と言われる。
スポーツセンターでバスケをすると伝えると、それならこの道をまっすぐで着くわよ、と教えてくれた。
僕はバッシュ以外のバスケグッズは持ってきていたので、
Tシャツ、バスパン(バスケで使うハーフパンツ)、タオル、そしてバッシュを持って向かった。
バンクーバーに来て初めてバスケをする
スポーツセンターに着くと、そこではいろんな競技が行われていた。
フィギュアスケートやアイスホッケーの練習が、目の前で見られる。
カナダの国技は確かアイスホッケーだったが、こうして練習している姿を見ると、
国民にとって身近なスポーツなんだなと感じた。
2階に上がると、体育館が見えた。
そこではすでにバスケをやっていて、フィリピン系、カナディアン、アジア系の人たちが
混ざってプレーしていた。
彼らが休憩をとった後、次のターンで、僕も入れてもらった。
チームは、ロックシザーズペイパー(海外版のじゃんけん)で決めた。
僕らの出番がきた。
僕は3週間ほどバスケから遠ざかっていたため、体がなまっている。
バンクーバーに来てから、ほぼ運動をしていなかった。
しばらくみんなのプレーを見ていると、あることに気づく。
みんな、基本的にパスをしない。攻めるタイミングが来たら、自分で攻めるのだ。
多少強引でも関係ない。ガンガン1対1を仕掛ける。
途中、ケンカでも起こりそうなくらいにぶつかり合う場面もあった。
日本のバスケ(特に社会人バスケなど)は、基本的にパス回しが多い。
みんながボールに触れるようにとか、もし初心者が混ざっていたら優先してボールを回すとか。
しかしここでは、そんなものはない。
とにかく自分が攻める。パスしない。
あまりにパスをくれないものだから、僕もリバウンドを取った後、
自分で攻めたくなって、オフェンスに参加した。
ただ、そこで僕が決めたり、他のメンバーが決めたりすると、めちゃくちゃ喜ばれる。
ハイタッチやコミュニケーションが多い。
英語で何を言っているのかわからないかと思ったが、
バスケ用語はもともと英語が多いので(スリーポイント、ファール、オフェンス、ディフェンスなど)、
コミュニケーションはほぼ問題なかった。
試合が終わると、あんなにバチバチにやり合っていた相手チームと、
談笑したりハイタッチしたりする。
こういう切り替えも、カナダらしいなと思った。
試合後、彼らのうちの一人に話しかけられた。
ここで参加していた日本人が僕だけで、珍しかったようだ。
彼は僕を、グッドプレーだったねと褒めてくれて、またここでバスケをやろうと言ってくれた。
僕もハイタッチを交わし、ハグをして、スポーツセンターを出た。
いい汗をかいた僕は、その後ファミリー宅に着いて、遅めの夕飯を食べた。
シャワーを浴びて、その日の眠りについた。
