日曜日の朝、バンクーバーはどんより曇っていた。
僕は前日に洗濯したものを畳む作業をしていた。
下着類は乾いていたが、分厚いものが乾ききっていない。
どこかにぶら下げておけば乾くだろうと思ったが、あいにくフックのようなものがない。
仕方がないので、マザーにお願いしてハンガーを借りた。
他にも少しだけ乾いていないものがあったが、それは椅子にかけるなどして対応した。
洗濯周りのものは、日本から全然持ってきていなかった。
今考えれば、洗濯ネットやコンパクトなハンガー、
できれば吊るせるもの(携帯用の物干しのようなもの)を持ってくればよかったと思う。
洗濯物を片付けたあとは朝食を済ませ、軽く勉強してから家を出た。
今日はだいすけくん、けんたくんと、バンクーバーに来て初めてレストランに行く。
あらかじめファミリーには、昼食はいらない旨を伝えてあった。
バスに乗り、ダウンタウンに着く。
彼らとはカナダジャーナルの建物の前で待ち合わせた。
今日は、あゆさんが教えてくれた日本食レストランに行く予定だ。
1週間以上、日本食を食べていなかった僕は、そろそろ日本食が恋しくなっていた。
日本食レストランへ
Robson streetを曲がったあたりにあるレストランへ足を運ぶ。
だいすけくんともけんたくんとも、オリエンテーション初日以来会っていなかったので、
久しぶりの再会に話が盛り上がった。
レストランに着くと、日本では見ないような珍しいメニューがあることに気づいた。
寿司のアボカドロールには驚いたが、けっこう注文している人がいた。
寿司にアボカドを巻くのか、と当時は思った。
日本食は、基本的に高い。
普通のカナダのレストランの1.5倍くらいする印象だ。
それでも、人は入る。ヘルシーでおいしいと人気だからだ。
特に寿司は、やはり大人気だった。
そして僕も、寿司を頼んだ。
日本にいたときは、ジャパレスなんぞ行くものか、
せっかくカナダに行くんだからその国の料理を食べよう、と思っていた。
それが、1週間で早くも限界が来てしまった。
人の意志とは、弱いものである。
寿司を10巻ほどオーダーした。
だいすけくんやけんたくんは、ラーメンやハンバーグなど、それぞれ好きなものを頼んでいた。
隣のテーブルから
しばらく近況を報告し合い、久しぶりに日本語で会話できることに安堵していると、
隣のテーブルの人たちに話しかけられた。
「けんた!何してるの?新しい友達?」
話しかけてきたのは、けんたくんと同じ学校に通う、日本人の女の子だった。
彼女は、台湾の友達と一緒にレストランに来ていた。
僕たちは挨拶をして、一緒にご飯を食べることになった。
台湾の子もいたので、できるだけ英語で話すように心がけた。
そして、ともこちゃん(けんたくんの友達)が、こう提案してきた。
「このあと、みんなでmeetup(ミートアップ)に行ってみない?
カフェで毎日やってて、コーヒー1杯を買って、みんなで英会話するの。
授業じゃないから、ただ会話を楽しむ感じ」
特に食後の予定を決めていなかった僕らは、おもしろそう、と思って参加してみることにした。
初めてのmeetup
5人で歩いて、カフェに着いた。
そこはとても広くて、真ん中に50人くらいは座れそうな大きなテーブルがあった。
すでに30人くらいが囲み合って話している。
見たところ、アジア系、日本人、ラテン系、そしてカナディアンもいた。
みんな、異国の文化に興味を持って参加しているらしい。
カフェのメニューも充実していた。
僕はコーヒーと、カップケーキを頼んだ。
席は散らばってみよう、という提案があり、
僕はアジア系に見える人たちと会話をした。
まずは自己紹介から。
相変わらず僕は拙い単語しか出てこなかったが、
同じアジア系と会話しているからか、安心して話すことができる。
次に、相手のターンになる。
彼の自己紹介は、とてもスムーズだった。そして…彼は日本人だった。
国籍を聞かないと、正直、日本人なのか、韓国か台湾あたりなのか、判別がつかない。
実際、僕も何度か、韓国や台湾あたりに間違われたことがある。
彼とは、その後仲良くなった。
ただ、ミートアップでは英語を練習しに来ているので、頑張って英語で話した。
どうしてもわからない単語があったときだけ、日本語で
「これ、なんて言うんだっけ?」
と聞くことがあった。
彼(ゆうたくん)は大学生で、英語教師を目指していた。
冬休みの間だけ、バンクーバーに英語の勉強をしに来ているという。
3月末には、日本に帰る。
それまでにたくさんの思い出を作って、英語をマスターして帰りたいと言っていた。
ゆうたくんの単語量には、驚かされた。
僕には出てこない単語が、ほとんど出てくる。
僕は彼に何度も助けられながら、その日初めてのmeetupを終えた。
ゆうたくんを含め、今日出会った全員とFacebookを交換して、帰路についた。
僕はこの日から、ほぼ毎日meetupに通うことになった。
